はずれ矢とその対策

〜なぜはずれたのかを理解するために〜

 

  なぜはずれたのか?どうやったらあたるのか?を理解することは、アーチェリーの上達において一番大切なことである。ミスをなくし、あたる射型でうてば、記録はどんどん伸びていくだろう。ただ、それがわからないから悩むのである。今回は、そのような悩みを持って一人で悩んでる人のために少しでも力になれたらと思い、作成した。一般的なこと(とくにチューニング)については、あなたの大学の友達や、先輩たちに任せるとして、もっと実践的なことを述べてみようと思う。

 

・本当にはずれたのか?

 くだらないことかもしれないが、まず、この確認をする必要があると思う。試合中などパニックに陥らないためにもまず、このことを考えなければならない。アーチェリーのサイトや、クリッカーの位置は非常に変わりやすいということをまず大前提として覚えておいてほしい。世界大会日本代表の人たちでも、風が吹けばサイトを動かすし、気温が低ければ、クリッカーの位置も動かす。一日のうちに何回も変えることがあるのが普通なのである。どんなときにもサイト、クリッカーの位置は絶対動かさず、変なところに矢が飛んでいくのは、自分の射型のせいだなどと変な執着心を持っていると、試合でいい点は(まぐれでしか)出せないはずだ。サイトや、クリッカーの位置は、自分の体の状態によって変わるものである。試合で的の真ん中にとんでいかなかったとき、まずサイトを疑ってかかるべきである。試合というのは、普段練習していないところで行うものである。それなら、サイトが(特に上下に)動くのは当然のことだろう(残念なことに練習場というのはたいてい距離が正確ではないので)。たとえ、普段から正しい距離でうっていたとしても(特に公式試合では)的の見え方が変わってきたり、そのときの精神状態もかかわって、サイトは普段の位置にはならない。こう考えたほうが、試合での不安をすこしでも取り除くことができるはずだ。最初にはずしたら、サイトが違うんだ、と思えば「今日は調子がおかしいのかな」なんて思うことも少なくなり、モチベーションを最初から失うこともなくなるだろう。

 

・矢が右方向にやたら外れる。

 では、具体的にはずれ矢の原因と対策について述べていこうと思う。このページでは右利き(右手が引き手)を前提として書いているので、左利きの人は全部反対だと思ってほしい。

 矢が右方向に外れるときは、主に、押し手の緩みが原因である。「重心の位置について」で述べたとおり、アーチェリーでは、矢筋と肩で台形を形成する。この台形を形成するためには、押し手と肩のラインで角度をつけなければならない。この角度が原因で、押し手は、右方向に緩みやすくなっているのである。うった直後に、ちゃんと押し手がもとあった位置にあるかが、この緩みを調べる一番いい方法だろう。右に緩まないためには、いつも押し手と肩のラインの角度が適切な位置であるようにする必要がある。肘のフォールドもいい解決策だが、一番簡単な方法は、やはり、押し手をしっかりと残すことだろう。結果オーライ的な言い方かもしれないが、押し手をしっかりと残そうとするだけでも自然にいい肩ができたりする。長期的になおすのであれば、肘でフォールドするか、一番安定する角度を見つけてそれができるようにするなど、いろいろ試してみるとよい。基本は押し手を自然に真横に上げたときの肩の角度が、理想的な肩の角度である。セットアップでの肩の確認も重要である。

 また、グリップも原因として考えられるときもある。このようなときは、手の甲が左前のほうに逃げている。グリップに原因があると思った場合は、押し手の親指を的に突き刺すイメージをもってうってみるとよい。グリップをなおしたことで結果的に押し手全体の緩みが解消できたりもするので、グリップから疑ってかかってみるのもよいかもしれない。全体をまとめてみると、グリップは親指を的に突き刺すイメージをもって、グリップ全体で的に向かって押し込むイメージでうつことで、押し手の緩みが解決できる。

その他の外れ方について下に並べてみた。

・弦サイトがずれている。(弦とサイトの間の間隔がいつもより広い。)

・顔向けが変。(顔がいつもより的のほうを向いている。)

 

・矢が左方向にやたら外れる。

矢が左方向に外れるときも押し手が原因のことが多い。先に述べたように肩の角度が押し手では重要なのだが、この角度が大きすぎると矢は、左に飛んでいくことになる。アンカリングのとき、一連の流れで一番強い負荷が、押し引き共にかかることになる。この力が、押し手が(角度が大きすぎて)不安定な状態で開放されると、押し引き共に反対方向に動いてしまうことになり、胸が開くような形となる。このとき、矢は左に飛んでしまうのである。こういう症状がある場合は、クリッカーを前に出して引き尺を短くするとよい。押し手の肩を突っ込んでしか、クリッカーが切れないようならそれは正しい射型とはいえない。矢尺を短くし、肩に角度をつけるのである。いいかたを変えれば、台形射型における、台形の高さを高くするのである。そうすれば、力が解放されたときにも押し手のブレが起きずに済む。

また、クリッカーを無理やりきっているような射型の場合にも左傾向が見られると思われる。この原因はアンカリングの際に、引き込めていないのが主な原因である。(クリッカーの位置が、そのときの体力ではきれない位置の場合もある。)理想は、アンカリングの際に、矢の先端がクリッカーの中に入るくらいである。アーチェリーではよく、「伸びろ」というが、実際伸びるのはほんの数ミリ程度である。矢の先端がクリッカーよりはるかに前にあれば、この分を伸びでカバーしなければならないが、これは非常に効率が悪いし、第一あたるのだろうか?

全体をまとめてみると、クリッカーの位置を自分の体力に見合った位置に調整し、アンカリングの際にちゃんと引き込んでくることが、リリース直後の力の解放によるブレを防ぐのに重要である。

その他の外れ方について下に並べてみた。

・弦サイトがずれている。(弦とサイトが重なって見える。)

・顔向けが甘い。(顔向けが甘いことによってアンカリングの位置は相対的に、右側にくる。そうすると矢の先端は左をむいてしまうわけである。)

・リリースが膨らむ。(リリースをはじいたり膨らんだリリースをすると、弦を離す直前の弦の位置が相対的に右側に来る。「リリースについて」を参照。)

 

・その他のはずれ矢

 その他、つまり上下へのはずれ矢について述べてみようと思う。矢が上下にぶれるときは、あごの位置が関係している場合が多い。普段より顔がリラックスした状態であれば、あごはあまり引けた状態ではなく、矢は下に飛んでいきやすい。反対に、普段より顔をしっかりと緊張させ、あごを引いている場合は、矢は上に飛んでいきやすい。これをなおすためには、常に一定になるように心がけるしかないだろう。では、どうやって一定にすればよいのだろう。

あごの位置は、あごで決めるのではなく、視線で決めるのがよいと思う。あごについての考え方は、主に二つあると思う。一つは、リラックスしたあごの位置、もうひとつは、ちゃんと引いてアンカリングをしっかりと行える位置である。どちらの場合もあごの上下の角度は視線によって決めるのが一番正確であると思う。前者では、シューティングの動作の最初のほうで(たとえばとりかけた直後)、的の上のほうを見るのである。そうすれば自然と顔の緊張がとれ、リラックスしたあごの位置ができる。後者では、これもシューティングの動作の最初のほうで、クリッカーを見るなり、グリップを見るなりするとあごがちゃんと引けた位置となる。人間は目が見た方向に顔を向ける傾向がある。あごの角度を覚えるよりも、視線を毎回一定にしたほうが簡単で、正確である。

シューティングの際に、クリッカーを見ているとあまり緊張しないという話を聞いたことがある。しかし筆者としては、これ以外の効果として、あごの位置が一定になることがあると思う。おそらくこれだと一石二鳥であるのだろう。また、クリッカーでなくてもグリップを確認しつつセットアップをすることでもあごの位置の固定に効果がある。グリップがしっかりとできていることを確認し、それがどんどん遠ざかっていくイメージをもつと押し手が安定するし、あごの位置もしっかりと固定できる。一度実践してみてほしい。

2003/02/12初版、2009/02/03改訂)